VISIONの文脈

ONE VISION , BIG FUTURE

今は広告よりPR 新しい時代の人を動かすコミュニケーション戦略とは

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人を動かすのに、予算は要らない。

「多くの生活者の心を動かすには、多くのお金(予算)を広告やメディアに掛ける必要がある。」「個人や小さなチームでは、動かせる人数の規模なんてたかがしれている。」と考える人は多いだろう。

しかし、「ただ予算をかけただけの広告やメディアだけでは人は動かなくなってきた。」と、従来のコミュニケーション手法を否定し、「今のメディア環境」に適したコミュニュケーション論を与えてくれるのが本書「広告やメディアで人を動かそうとするのは、もうあきらめなさい。」

「LINE」・「R25」・「livedoor」などジャンルを問わず、様々なメディアに精通した田端氏と「戦略PR」で日本の広告界に新たな旋風を巻き起こした本田氏の話題の共著は、「予算はなくともヤル気とセンスで、大きな市場に打って出よう!というチームや個人を応援」してくれる一冊だ。

 

本書のポイント 

  1. メディア環境の"今"を知る
  2. 生活者と"会話"を
  3. "多くの人"に見てもらえばそれでいいのか
  4. "個人"が"1万人"を動かすには

 

メディア環境の「今」を知る

本書のタイトルを補足すると「(これまでのように)広告やメディア(だけ)で(たくさんの)人を動かそうとするのは、もうあきらめなさい。」になると本田氏が言うように、なぜ、広告やメディアだけでは多くの人を動かすことができないのだろうか?

それは、インターネットやSNSの登場により、生活者が「自分が興味あるものだけを見たり読んだりして楽しむ自由」を手に入れたから。

 

つまり、「コンテンツの編集権や編成権」は「送り手」側から「受け手」側へとシフトし、従来のように「マスメディアの広告枠から強制的に多くの生活者へメッセージを見せ、人を動かす」というかつて定番だった力技が通じなくなってしまったのだと説いている。

 

インターネットやスマートフォンの出現自体は表面的な現象に過ぎない。最も重要なことは、そういったテクノロジーがメディア環境の前提条件を大きく変え、一般ユーザーにメディア空間上の「編集権」「編成権」を移行させてしまった、ということだ。

 

生活者と「会話」を

「メディア環境の前提条件」が変わったいま、情報の発信側はどうすれば生活者に振り向いてもらうことができるのだろうか?

 本書では、現在のメディア環境を選挙運動にたとえ、「候補者(企業)」は、「有権者(生活者・消費者)」に対し、「選挙カー(メディア)」の上で、ただ自社の「商品」や「ブランド」について「演説」をするのではなく「会話」をすべきだと主張。

 

現代のメディア環境は、選挙期間中といえども、街を歩く聴衆がみな、スマホで好きなコンテンツを眺め、耳にはイヤフォンをさしているような状況である。ただ駅前に選挙カーを乗りつけて演説するだけでは、話を聞いてもらうことすらできない時代がやってきてしまったともいえるのだ。

 

つまり、情報の送り手は自分の言いたいことを一方的に伝えるのではなく、生活者と「一人の個人と個人」として向き合い「会話」を心掛けることで、こちらの呼びかけに耳を傾けてくれるのだ。

 

多くの人に見てもらえばそれでいい?

「自分のブログを多くの人に知ってもらいたい」「自社の製品やサービスの情報をより多くの人に届けたい」からといって、「多くの人にリーチできれば良い」と、ただ漠然と計画を立てるだけでは効果的な情報発信はできない。

本書では、まず、「何人」に情報を届けるべきか、「その必要規模のリーチを得るにはどうすれば良いのか?」具体的な戦略を立てることが必要だと説く。

 

 自分は、今、ピンまで何ヤードの地点にいて具体的に握るべきクラブ(=使うべきメディア)は何なのか?目標達成のためには、具体的に、どのようなアプローチで迫っていくのか?といったことを、具体的な行動レベルの計画に落とし込んで転換していくことが必要である。

 

この「未来地」を把握することで、大企業のように多額の広告予算がなくともソーシャルメディアなどを駆使し、多くの人を動かすことができるという。

単に多くの人に情報を届ければ良いという幻想にとらわれず、届けるべき人に、最適なメディアを組み合わせて、自身が伝えたいメッセージを届ける手段を検討すべきだ。

  

"個人"が"1万人"を動かすには?

では具体的に、大企業ほどの宣伝予算を持たない個人や小さなチームが、多くの人の心を動かすにはどうすればいいのか?

本書では1,000人〜10億人を動かしたポイントがそれぞれ解説されているが、ここでは1万人を動かすポイントをピックアップする。 

理由は、「ネットだから動いた」事例が中心に上げられている点と、個人や小さなチームでも大きすぎず、小さすぎずの「ひとまず」実現可能性のある数値レベルだからだ。

「もっと多くの人を動かしたい」という人でも、まずは1万人の心を動かし、その後、規模を拡大していくほうが現実的だろう。

1万人を動かした要因として、本書では3つのポイントと事例が紹介されている。

 

  1. 人間の根源的な欲求や本能に訴えかける
  2. コミュニティ形成を構造化する
  3. 全体としての連帯感を醸し出す

 

Case1

堀江貴文氏の1万5,000人の読者を擁する有料メールマガジン

Case2

オランダで少女の誕生日に見知らぬ若者数千人が押しかける

Case3

米国発のラブレターボランティアに2万人以上が参加

 

詳細は文字数の都合上、割愛するが、case1では、「著名人ホリエモン」に直接質問できる点や購読者しか分からない情報を共有しているという「連帯感」を醸成したと説いている。

case2では「女の子」の家に押し掛けるという「男の本能」、case3では、ラブレターを書く側も貰う側も、「誰かに承認されたい」という欲求を満たし、その中心には「理想を掲げるコア層」がいて、それに「乗っかる層」がいるという「コミュニティの形成が構造化」されたと解説されている。

「とりあえず、facebookやtwitterでバズを起こそう」という手段を考える前に、まずは生活者の「インサイト」に着目し、動かしたい人数の規模に応じた「ココロのツボ」を押すことから考えていく必要があるようだ。

 

まとめ

本書の終盤には、生活者の「ココロの沸点」を発見する方法論や「メディアやコンテンツの戦略や戦術」についても詳しく述べられており、限られた予算で多くの人を動かしたいという個人や小さなチームでビジネスを遂行する人は、喉から手が出るほど欲しかった情報がたくさん詰まった一冊になることだろう。

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