VISIONの文脈

ONE VISION , BIG FUTURE

「あるべき姿」と「一貫性」が “強いブランド”をつくる - 選ばれるための「ブランディング」のはじめ方

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「ブランド」って何だっけ? 

テクノロジーの発展により、どの企業の商品やサービスも追いつき追い越せの「いたちごっこ」を繰り返すばかりで、商品の差別化が難しくなっている昨今。

さらにネットやSNSなどの普及による情報洪水時代の中、生活者に自社のことを見つけてもらうことすら難しくなっている状況だ。その中で、どういった企業がコモディティ化しつつある社会を生き抜いていくことができるのだろう。 

これからの時代は、あるべき姿をカタチにできる会社だけが生き残れます。会社のあるべき姿とは、その会社のアイデンティティやビジョン、または独自価値や「らしさ」など言い方はさまざまですが、現在、自社のあるべき姿が明確で、それをはっきりと語れる会社が存在する一方で、自分たちを見失っている会社も多いと思います。

 

と主張するのは、『選ばれ続ける必然 誰でもできる「ブランディング」のはじめ方 (講談社+α新書)』の著者であるブランディングディレクターの佐藤圭一氏。

さらに、本書では人によって様々な解釈のある「ブランド」の定義について次のように述べている。

 

会社の名前を聞いたりロゴを見たりしたとき、人はこれまでの体験や情報からその会社の持つ特徴やイメージ、もしくは評判などを頭の中に浮かべます。この「頭の中に存在する価値やイメージのかたまり」が「ブランド」です。アップルと聞いて思い浮かぶこと、不祥事を起こした会社の名前を聞いて感じること、これらすべてがブランドです。

 

今回は、本書から「ブランディング」の実践方を学んでいく。と、その前にまずは、強い”ブランド”と呼ばれる企業は他の企業と何が違うのか。その所以について見ていこう。

 

ブランディングのポイント

 

  1. 強いブランドは”あるべき姿”が明確
  2. ブランディングに必要なのは”一貫性”
  3. ”あるべき姿”をカタチにする3つのステップ



1. 強いブランドは”あるべき姿”が明確

本書でいうブランディングとは、「あるべき姿をカタチにして(BRAND)」+「あらゆる活動を通して、伝え、浸透させていく(ING)」活動のこと。

なかでも強いブランドには「BRAND」部分の「会社のあるべき姿」がはっきりしているという。これは、世界を代表する企業のミッションを見てみると分かりやすいだろう。

 

ナイキは、「世界中の全てのアスリートにひらめきと革新をもたらすこと」をミッションとして、アスリートのパフォーマンスを高めるための革新的な商品開発に力を注いでいます。トップアスリートへのスポンサーシップを組むだけでなく、ナイキの活動には、すべてのアスリートへの敬意を感じさせます。

 

スターバックスは、「人々の心を豊かで活力あるものにするために-ひとりのお客様、一杯のコーヒー、そしてひとつのコミュニティから」というミッションがあります。自分たちの目指すところは、「人々の心を豊かで活力あるものにする」ことだと明確に定義し、自分たちの店舗を、仕事という第一の場所、家庭という第二の場所に続く、「第三の場所」と価値づけています。スタッフの一人ひとりが、ただコーヒーを提供するだけのショップではなく、人々の心を豊かにするためのコミュニティ空間であろうとしています。

 

会社の”あるべき姿”が明確であれば、「社員にも共有されやすく」、「お客様にも理解されやすい」状況が生まれ、これによって「共感」を呼びやすくなりファンを作りやすくなるという。

では、”あるべき姿”をカタチにして、BRAND「ING」していくにはどうすれば良いのだろうか。



2.ブランディングに必要なのは”一貫性”

ブランディングに必要なこと、それは「一貫性」だと著者は主張する。ここでいう一貫性とは、どんなシチュエーションでその会社と出会ったとしても、「あの会社らしいね」といわれる"筋が通った一貫性"のこと。

 

お客さまと会社の接触ポイントも多岐にわたります。商品やパッケージはもちろんのこと、広告やウェブサイト、店舗、営業マンなど非常に多くのポイントで、お客様は会社に接しています。一つひとつの接触ポイントがズレていると、お客様の認識やイメージにズレが出てしまいます。一方で、あらゆる接触ポイントで一貫した価値やイメージを提供できれば、効果的にブランドを構築することが可能になります。

 

本書では“一貫性”に関する悪い例として、ある会員制のリゾートホテルのエピソードを引き合いに出している。そこは富裕層を対象としたラグジュアリーなホテルで、黒を基調としたサイトやパンフレットもハイセンスで高級感にあふれていた。

しかし、ある顧客がそのホテルから取り寄せたパンフレットの送付状が、薄っぺらいコピー用紙だったという。それが安っぽく見え、さらにはスタッフが手書きした送付状の宛名が丸文字で、どこか幼い印象を与えた。

つまり、どれだけサイトがかっこよかったとしても、送られてきた送付状に違和感を抱いたら、そのイメージにはズレが出てしまう。小さなことだが、これだけのことでもブランドイメージを損なってしまう恐れがあるということだ。このエピソードは如何にブランディングにおいて”一貫性”が重要であるかを教えてくれている。

 

反対に、アップルは”一貫性”による効果的なブランド構築の好例だという。アップルが過去に発信した「Think Different」というメッセージは、物事を違う角度から考え、全ての活動に革新をもたらし、世界を変えようといった、スティーブ・ジョブスの哲学が共有されていると著者は述べている。

その哲学がスマートで洗練されたデザインにも反映され、商品をはじめ、パッケージや、ホームページ、ショップの内装、店員の対応まで一貫性がある。そのすべてのデザインが「他の会社とはちがうアップルらしさ」として明確に認識されていることが、世界から支持されている要因だという。

 

 

3.”あるべき姿”をカタチにする3つのステップ

では、これから自社のブランドを強化したい、あるいはブランディングを本格的に始めたいという方々のために、本書で紹介されているブランディングの3つのステップをざっくりと紹介する。本書には具体的な事例も紹介されているので、気になるかたは是非手に取って見てほしい。

 

  1. ”あるべき姿”を「明確化」する
  2. ”あるべき姿”を「言語化」する
  3. ”あるべき姿”を「可視化」する

 

1.”あるべき姿”を「明確化」する

これは自社の「ブランドコンセプト」を明確にする作業。

まず、”あるべき姿”を明確にするために、「自分たちの現状を知り共有する」→「未来に向けた自分たちの提供価値を考える」→「自分たちの印象やイメージを考える」→「それらをまとめてあるべき姿を言葉にする」といったワークショップ(個人の場合は個人ワークでもいい)で、自社の魅力を洗い出す。

詳細は文字数の都合上割愛するが、そこで浮かび上がったキーワードなどを紡いで、一度整理し、さらに下記の3点を軸にブラッシュアップしていくのだという。

 

  1. どんな人たちに愛されたいか(理想のお客様像)
  2. どんな価値を提供できるか(提供価値)
  3. どんな「らしさ/イメージ」を感じさせたいか(ブランドパーソナリティ)

 それができたら、次のステップに進もう。

 

2.”あるべき姿”を「言語化」する

ブランドコンセプトを文章化するということは、「自分たちの会社はこういう価値をあなたに提供します」とお客様に約束することだと著者は主張する。

 

これは、ブランドステイトメント(宣言文)や、ブランドプロミス(約束文)などとも言われます。自社のあるべき姿を「お客様や社会への約束」として端的に明文化し、有言実行を目指すものです。

 

ブランドステイトメント(プロミス)

ブランドコンセプト(理想的なお客様像・提供価値など)を簡潔な表現としてまとめ、お客様や社会に対する「約束」として宣言した文章。300字〜500字程度が理想。

 

ブランドスローガン(タグライン)

ブランドステイトメントを一言で端的に表したメッセージ。企業ロゴとともに使用することも多い。例えばNIKEなら「JUST DO IT」、Appleなら「Think Different」、コスモ石油なら「ココロも満タンに」などだ。

 

また、スローガンには4つの方向性があるという。

  1. 事業領域を伝える(何の事業を行っているかを会社かをストレートに表現する)
  2. ビジョンを伝える(どんな会社を目指したいかを表現する)
  3. お客様への提供価値を伝える(お客様に何を与えることができるかを表現する)
  4. 会社の姿勢を伝える(社員がどんなことを心がけて活動したいかを表現する)

 ブランドスローガンとブランドステイトメントが完成したら、最後のステップに移ろう。

 

3.”あるべき姿”を「可視化」する

“あるべき姿”をビジュアルでカタチにすること。ここで大切なことは上述した”一貫性“を保つこと。なぜなら、バラバラのビジュアルから受ける印象は、信頼性の欠如などにつながってしまうからだという。したがって、会社が発信する情報を言葉だけでなく、見た目でもしっかりと定義し、統一することが重要と著者は主張する。

例えば、あなたの会社は下記のような「企業の顔」になるものや「ステーショナリーツール」などには一貫性があるだろうか。

  • シンボルマーク
  • ロゴ
  • パッケージ
  • ホームページ
  • パンフレット
  • 広告
  • お店や売り場のショールームやサイン
  • 名刺
  • 封筒

 

これらのビジュアルをコーポレートカラーやフォント、ロゴなどを規定し統一することで、社外に対しても一貫したイメージを醸成できるだけでなく、制作にかかるコストや手間も省けると著者が述べるように、ビジュアルデザインにまで気を配ることはまさに「いいことづくめ」と言えるだろう。

この3つのステップを経ることで、ブランディングの「土台」はできたと言っても過言ではないだろう。しかし、BRAND「ING」は常に現在進行系であり、企業の終焉まで終わることはない。常に進化していく、生きもののようなものだ。その時代の空気を嗅ぎ分けていきながら、順応していくことが求められるだろう。



まとめ

著者は、凸版印刷に在籍し、東京スカイツリーのある鉄道企業「TOBUグループ」や北海道が誇る乳製品企業「よつ葉乳業」など数々のブランディングプロジェクトを手掛けてきたブランディングディレクター。

曖昧模糊とした「ブランディング」という言葉をわかりやすく解説し、ブランドの作り方を豊富なケーススタディを踏まえながら丁寧に教えてくれる。

また、企業だけでなく、フリーランスには欠かせない「セルフブランディング」や現在注目を集める「地域ブランディング」にも応用できると著者が主張するように、ブランディングの概念を知ることで、さまざまな場面での応用と実践が可能だ。

読んで損はない一冊だろう。

 

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